企業・団体様へ

学ぶ 木はエアコン

温度・湿度をコントロールしている木は、まさにエアコンです。



図1 小型住宅内の音頭および相対湿度の変化
太線:木材内装、点線:ビニル壁紙内装、
細線:百葉箱内
引用:則元京、山田正;木材研究資料、No.11、17(1977)

 正倉院の御物がきわめて良好な状態で今日まで保存されてきたことは、よく知られています。正倉院は、三角断面の校木(あぜき)を積み上げた壁と高い床の校倉(あぜくら)構造が特徴で、その校木が外界の温湿度変化に対して温度と湿度をコントロールしてきたといわます。もちろん、校倉構造が大きな役割を果たしてきたことは間違いありません。しかし本当は、御物を収納した木製の唐櫃※1が、温湿度のコントロールの主役だといわれています。
 図1は、平屋6畳の小型住宅を使った実験ですが、窓と戸を除いた全面に合板を貼った「木材内装(太線)」、「ビニール壁紙内装(点線)」、「百葉箱(細線)」を見てみましょう。ビニール壁紙内装の湿度は、温度の変化と“逆行”した動きをし、百葉箱とほぼ同じタイミングで変化します。それに対し、木材内装の湿度は外界の動きにほとんど影響されずに推移しています。つまり、この状態が唐櫃の中でも起きているのです。


 なぜ、木はこのような特殊な性質を示すのでしょうか?
 写真1を見てみましょう。横軸の湿度が増えるにつれて、さまざまな物質は湿気を吸い込みますが、合板が断然大きな吸湿能を示しています。しかし、この吸湿能は温度が下がると増え、温度が上がると吸湿能は下がるという性質があります。また、逆に湿気を吸うときは熱を出し、湿気を吐き出すときは熱を吸う性質があるので、周囲の温度変化を少なくする働きもします。したがって、図1の木材内装の湿度一定は、温度の上昇下降と合板の吸放湿の「逆行」の性質のおかげで、木はこのような絶妙なしかけで温度・湿度をコントロールしているのです。

※1 唐櫃(からびつ)……脚が4本または6本の、かぶせぶたのついた方形で大形の箱。衣服や、図書・甲冑(かっちゅう)などを入れた。


写真1 いろいろな建築資材の吸湿量
引用: 日本木材学会編 すばらしい木の世界