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読む 木のある暮らしと私

ケニアの木のある暮らし

小豆大福さん(ケニア)


夫の勤務地であるアフリカのケニアに来て、10日が経った。 自然豊かなケニアは、首都ナイロビから車で30分も行けば、そこにはサバンナが広がる。ナイロビ市内には高層ビルが立ち並ぶが、町の中心部から少し離れた住宅地は、緑豊かで、日本では見られない珍しい花が咲き、木々が茂る。今はジャガランダという木の季節で、市内のあちらこちらで紫色の花が咲き誇る。

治安が悪いため、外国人が気軽に行ける公園は少ないが、市内には緑豊かな公園がいくつもある。広い敷地には木々が茂り、50人は裕に木陰で休めそうな大きな木もある。公園は市民の憩いの場で、木陰で賛美歌を歌うグループ、結婚式を挙げるカップルなど様々だ。 自然豊かなケニアだが、地方では燃料の薪を得るために、木が伐採され続けることなどにより、環境問題が深刻らしい。ノーベル平和賞を受賞し、日本でも有名な「もったいない」のおばさん、元環境副大臣のマータイさんがケニア全土で植林運動を進めている。 ケニアはプラスティック製品が高いが、自然が豊かで人件費が安いため、木工製品が手ごろな値段で購入できる。ベッド、ダイニングテーブル、ソファー、テレビ台など、私と夫が住むアパートにある全ての家具は木製で、床も木のフローリングだ。全てが手作りでどれも素朴な味わいがある。ナイロビ市内には、個人の小さな木工所が軒を連ねる地域があり、オーダーメイドも受け付ける。立派な店構えを持っている人たちはわずかで、多くの場合は、木工所前の道路脇にテーブルやソファーなど製品を無造作に置いているだけだ。 先日、人の良さそうな職人のおじさんがいる木工所で、自分用のパソコン机と椅子を作ってもらった。机の高さにこだわる私は、好みの高さと色を伝え、机と椅子を注文した。完成までに3日間、机と椅子を合わせて日本円にして約4,500円。既成のプラスティック製のものを、市内の高級スーパーで購入すると安くても1万5千円はする。おじさんが作った机と椅子は、シンプルなデザインだがしっかりした作りで、木とニスの良い香りがする。木工所で出来上がったばかりの机と椅子に座り、高さを確かめる。心持高かったので、その場で高さを調整してもらう。夫と乗ってきた車の後部座席に、おじさんは幼い我が子を抱きかかえるように、そーっと机と椅子を運んでくれた。「使ってみて、高さが気に入らなかったり、具合が悪くなったらいつでも持っておいで、直してあげるから」と、おじさんは笑顔で見送ってくれた。職人は、日本でもアフリカでも、同じだなぁと嬉しくなる。 この原稿はおじさんが作ってくれた木の机で書いている。日本にいてもアフリカにいても、やっぱり木のある暮らしは良いなと思う。