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学ぶ 木づかい基礎知識

国産材/広葉樹一覧


アオダモ、コバノトネリコ」(モクセイ科 Fraxinus lanuginosa )

アオダモ、コバノトネリコ」(モクセイ科 Fraxinus lanuginosa )

テニスやバドミントンのラケット、スキーの板などに木材が使われていた頃には欠かせない樹種の一つでしたが、現在ではバットの素材として知られます。野球の本家アメリカではホワイトアッシュを使っていますが、日本産の樹種では、硬式野球用のものとしてはアオダモがそれに最も近い性質を持っています。
北海道、本州、四国、九州などに分布しますが、最も蓄積の多いのは北海道です。需要は非常に高いのですが、もともと大きくなるものが少なく、蓄積が減っているため、入手することが段々と難しくなってきています。バットのほか、器具、家具材、ゲートボールのスティック、ゴルフのクラブヘッドなどに用いられています。

アオハダ(モチノキ科 Ilex macropoda)

アオハダ(モチノキ科 Ilex macropoda)

分布は広く、北海道、本州、四国、九州、さらには朝鮮、中国に見られます。この属の樹種は数が多く、私たちの目に触れやすい所に生育しています。樹形はあまり大きくならず、一般には板の形や丸太で見ることはありません。細工物などにはよく使われているので、知らずに手に触れていることもあるでしょう。
器具、ろくろ細工による玩具、特に東北地方ではこけしの材料にすることがあります。もともとこけしには淡色の木材を使うのですが、その中でもひときわ目立って白く、象牙のような光沢を持つものがあったら、このアオハダかこの属の木材を使っていると考えてよいでしょう。木材の白さを生かして、寄木細工、木象眼などにも用いられます。

アカガシ(ブナ科 Quercus acuta )

アカガシ(ブナ科 Quercus acuta )

本州の福島県および新潟県の海岸に近い所から南へ向かって分布し、四国、九州、さらに斎州島、朝鮮半島南部にかけての温暖帯に広く生育しています。日本産のカシ類のうちで最も高い所まで分布している種です。常緑で、樹高20m、直径1mに達し、カシ類の中では大きい部類です。日本では一般的に、重硬な木材の代表的なものとしてカシ類の名が挙げられます。
かつては、器具材、車両材、機械材、建築材、枕木、薪炭材、器具柄材、足駄歯、櫓材など重硬な材料が必要な用途に、広い範囲にわたって使われていましたが、最近は私たちの目に触れる機会が減ってきました。比較的身近なものとしては、木刀、長刀、ゲートボール、屋内の遊具などに使われています。

アサダ(カバノキ科 Ostrya japonica )

アサダ(カバノキ科 Ostrya japonica )

この属には一種しか含まれていません。北海道の日高、十勝地方に多く、本州、四国、九州の霧島山にまで分布しています。また、朝鮮半島からさらに中国にも生育しています。あまり大きくはならず、高さは20mどまりです。本州などでは、この木材の製品に出合うことは少ないでしょう。しかし、北海道では家具の製造に使われており、なじみが深いはずです。
建築用材としては、床板、敷居など、さらに家具類、運動具、日常の道具類、橇(そり、かんじき)、特殊なものとしては靴の木型などが知られています。器具の柄も作られます。木材の色や材面の感じがよく似ているカンバの類と同じような用途に使われています。

イスノキ(マンサク科 Distylium racemosum)

イスノキ(マンサク科 Distylium racemosum)

イスノキとシイノキの木材は、同じようにシイノキとして扱われていることが多いようです。前者は本州(関東以西)、四国、九州、沖縄、台湾、中国中南部などに分布し、照葉樹林の代表的な樹種とされています。後者は本州の福島県および新潟県以南、四国、九州、沖縄、済州島などに分布しています。
重く、硬いので、加工をするためには工夫が必要ですが、製品はその特徴を生かしたものが大半。家具、器具、楽器(三味線、琵琶のばちなど)、機械、フローリングなどに使われます。イスノキでつくった木刀も売られています。 また、変わった利用法として、風蝕材があります。立ち木のまま枯らして、さらに長期間風雨に曝し、これを磨いて床回りに使います。京都では舎利と呼びます。日向ではイスノキの皮をはいで風蝕材としたものを "スヌケ"と言い、高価な床柱として知られます。

イタヤカエデ、イタヤ(カエデ科 Acer mono)

イタヤカエデ、イタヤ(カエデ科 Acer mono)

北海道、本州、四国、九州に分布し、サハリン、千島、朝鮮、中国東北部と北部でも見られます。日本には20数種存在します。また、公園や庭園で鑑賞用として植えられることが多く、園芸品種もたくさんあります。同じ目的で外国産のカエデ類が導入されていますが、木材の場合はイタヤカエデが代表的なもので、その他の種類はあまり目立ちません。
家具、器具、運動用具、建築、楽器などに用いられます。また、コケシの材料としてもよく知られています。

イヌエンジュ(マメ科 Maackia amurensis var.buergeri)

イヌエンジュ(マメ科 Maackia amurensis var.buergeri)

北海道、本州、四国に生育しますが、九州には少ないとされています。千島、朝鮮半島、台湾、中国などにも分布します。比較的よく見られる種ですが、樹高が12m、直径は30cmと、あまり大きくならないので、蓄積は少なく、木材としてまとまった量が得られるのは、主に北海道です。
大きな材が少ないので、器具材、あるいは、床柱などの装飾的な建築内装材とされるのが普通です。材色や木理の美しさを利用して、三味線の胴、月琴などの楽器を作るのにも使います。産地によっては、漆器の木地に使う所があります。また、ろくろ細工やアートクラフト(動物の像、ブローチ、キーホルダー、その他)の材料にもなっています。

エゴノキ(エゴノキ科 Styrax japonica )

エゴノキ(エゴノキ科 Styrax japonica )

北海道(渡島以南)、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮などに広く分布し、小川のふちなどでよく見られます。木材としては、産地以外ではあまり知られていませんが、実は身のまわりのいろいろなものに利用されています。薪炭用に造林をした所もあります。
直径がそれほど大きくはなりませんが、加工がしやすく、しかも私たちの生活に近い所によく見られることから、伝統的な道具、器具などに使われています。和傘の先端部、傘の柄、ろくろ細工、玉突きのスティック、樽の呑み口、そろばん玉、材の色が薄いので色付けをするような用途、将棋の駒、木櫛など。また、ミズキ、イタヤカエデなどにまじって、エゴノキがこけしの材料として用いられています。エゴノキの炭は、ガラス器や漆器の研磨に使われます。

オニグルミ(クルミ科 Juglans sieboldiana)

オニグルミ(クルミ科 Juglans sieboldiana)

北海道、本州、四国、九州などに分布していますが、蓄積は多くはありません。どちらかというと、東北地方、北海道などが産地としてよく知られています。造林されることもあります。オニグルミの木材で日常接することがあるのは、洋風の家具、あるいはフローリングが大部分です。オニグルミの実は食用になりますが、日本でクルミの実として売られているものは、果実を目的として栽培されているテウチグルミです。
木材は、中庸な硬さと重さを持ち、狂いが少なく靭性があります。用途として特徴的なのは、銃床です。ほかに、家具、建築、器具、彫刻などに使われています。

カキ(カキ科 Diospyros kaki)

カキ(カキ科 Diospyros kaki)

カキと言えば果実。木材に出合うのはまれです。よく似ているものにヤマガキがあり、マメガキ、シナノガキ、トキワガキなども同属です。分布は本州中部、南部、四国、九州、伊豆七島などで、朝鮮、中国などに分布しています。マメガキは中国から渡来したものとされ、シナノガキは関東地方南部以西の本州、四国、九州、沖縄、台湾、朝鮮南部、中国、トキワガキは本州の東海から山陽地方、四国、九州、沖縄、台湾、中国に分布しています。
床柱、内部装飾などの建築材として、また、寄木、象眼、家具、彫刻などに珍重されます。アメリカ産のパーシモンは同属の樹種で、ゴルフのクラブに使われていることでよく知られますが、日本でもカキがクラブのヘッドに用いられています。柿渋はカキの類の未熟な果実を砕き、その搾った液を半年放置して塗布用にしたものです。

カツラ、桂(カツラ科 Cercidiphyllum japonicum)

カツラ、桂(カツラ科 Cercidiphyllum japonicum)

北海道、本州、四国、九州などに分布していますが、蓄積の多いのは北海道です。かつては、洗濯用の張り板、和裁の裁ち板などのような用途があり、なじみの深い木材でした。
軽軟で、加工がしやすいので、家具用材、特に引き出しの側板として定評があります。しかし、最近は生産量が減り、需要が追いつかなくなってきため、ずっと値段の安い南洋材の中から材質が比較的似ているものを探し出し、ナンヨウカツラというような商品名をつけて代用品にすることが多くなっています。よほどでないと、カツラを引き出しの側板に使った家具に出合うことはないようです。碁・将棋などの盤、彫刻、器具などにも使われます。

キハダ、ヒロハノキハダ、シコロ 黄蘖(ミカン科 Phellodendron amurensis)

キハダ、ヒロハノキハダ、シコロ 黄蘖(ミカン科 Phellodendron amurensis)

北海道、本州、四国、九州に分布しています。さらに、中国、朝鮮、サハリンにも見られます。一般にキハダとして市場に出ているものは、北海道産のキハダです。それほど蓄積の多い樹種ではありません。
用途としては、家具、指物、器具、単板、天然木化粧合板などがあります。しかし、キハダは木材以外の用途で知っている人が多いのではないでしょうか。それは、樹皮が薬によく利用されるからです。内樹皮は鮮やかな黄色で、胃腸薬とされ、ダラニスケあるいは百草などの名で家庭薬の成分とされています。そのほか、いろいろな漢方薬の成分とされ、内服薬ばかりでなく、外用にも使われます。また、黄色の染料としても使われていました。

キリ 桐(ゴマノハグサ科 Paulownia tomentosa)

キリ 桐(ゴマノハグサ科 Paulownia tomentosa)

野生のものはなく、北海道南部から南の各地に植栽されています。よく知られている産地は、福島県(会津桐)、岩手県(南部桐)、さらに新潟県、茨城県などです。しかし、最近では日本でキリの需要が多いことから、中国、台湾、米国、フラジルなど海外諸国で植栽されたものが大量に輸入されています。同類には、タイワンギリ、ココノエギリなどがありますが、これらを見分けるのは容易ではありません。このようなことから、婚礼家具の代表とも言えるキリのタンスのかなりの割合が、外国育ちのキリを使ったもののはずです。
かつて「娘が生まれたらキリを植えて、嫁入りの時に伐ってタンスを作り、持たせる」ということが言われ、実際に行われていました。そのくらい成長が早く、短期間で木材が得られる樹種です。キリを植える習慣は減ったものの、キリのタンスは婚礼家具の一つとして、依然として頑張っています。 加工は容易で、製品は狂いが生じにくく安定性があります。その特性が種々の家具に用いられる理由の一つで、密閉度の高いものを作ることができます。 ほかの用途としては、器具、建具、箱、楽器(琴など)、彫刻、下駄、羽子板などが知られています。軽軟なため、下駄にした場合は土の細かい粒が木材に食い込み、摩滅が少なくなります。

「クスノキ、樟」(クスノキ科 Cinnamomum camphora)

「クスノキ、樟」(クスノキ科 Cinnamomum camphora)

本州中、南部、四国、九州、さらに台湾、中国に分布します。木材、葉から樟脳油を採取するために造林されています。木材の利用は主目的ではありません。近年の防虫剤は合成化学製品ですが、樟脳はかつて衣服の防虫剤として広く用いられ、タンスの臭いの主でした。主な用途は、器具、家具、建築(社寺など)、楽器、箱、彫刻、挽き物(ひきもの)、木魚などです。美術展などへ行くと、木材の彫刻作品が置いてある部屋で、強い芳香に気づかれることがあるでしょう。これはクスノキでつくった作品が中にあるからです。最近でも時々、扉を開けると樟脳の芳香がする洋服タンスなどに出合うことがあります。これは、内貼りにクスノキの板あるいは合板を使っているものです。これによって、防虫効果を期待しているのでしょう。

「クリ、栗」(ブナ科 Castanea crenata)

「クリ、栗」(ブナ科 Castanea crenata)

北海道南部、本州、四国、九州に分布し、福島県、宮城県、岩手県、島根県などに蓄積が多いとされています。食用にするクリを採取するために植栽されています。甘栗は中国原産です。クリの名前から食用になるクリの果実のみを想像するかもしれませんが、木材も忘れてはなりません。今でもクリが多く生育している地方で、ほとんどの柱にクリが使われている建物を見ることがあります。これは、建築材料としての優秀性を示すよい例です。建築(土台、装飾)のほか、家具、器具、車両、挽き物(ひきもの)、枕木、土木などに利用されます。

「ケヤキ、欅」(ニレ科 Zelkova serrata)

「ケヤキ、欅」(ニレ科 Zelkova serrata)

本州、四国、九州、さらに朝鮮、中国に分布し、造林されることもあります。北海道には分布していません。日本では、重要な広葉樹材の一つで、最近では、特に和風の家具を中心としてケヤキを使うことがブームになっている感があります。比較的低いところに生育しているので、私たちの目にもふれやすいはずです。東京都内でも並木として植えられることがあり、府中のケヤキ並木も有名です。ケヤキに対する需要が増えたため、最近では、南洋ケヤキなどといって安い南洋材をケヤキらしく見せて取り引きする例もあります。
大きな木材は寺社建築、かつては城にも用いられました。現在は、建築用としては装飾的な部材に使われます。家具、臼、杵、電柱腕木、太鼓の胴、器具、彫刻、日常の生活器具などにも用いられます。

「コジイ、ツブラジイ」(ブナ科 Castanopsis cuspidata)

「コジイ、ツブラジイ」(ブナ科 Castanopsis cuspidata)(C. cuspidata var. sieboldii) 

両者の木材は同じようにシイノキとして扱われていることが多いでしょう。コジイは本州(関東以西)、四国、九州、沖縄、台湾、中国中南部などに分布しており、照葉樹林の代表的な樹種とされています。スダジイは本州の福島県および新潟県以南、四国、九州、沖縄、済州島などに分布しています。
用途としては、建築内装、器具、椎茸のほだ木などがよく知られています。

「ヤマザクラを含むサクラ類」(バラ科 Prunus jamasakuraを含むPrunus spp.)

「ヤマザクラを含むサクラ類」(バラ科 Prunus jamasakuraを含むPrunus spp.)

ヤマザクラは本州、四国、九州、朝鮮にも分布します。サクラ類には、本州中部以北、北海道、南千島、サハリン、中国東北部、シベリアなどに分布するシウリザクラ、北海道、本州、四国、九州に分布するウワミズザクラをはじめとして、多数の種類、品種があります。木材として利用される量は少なく、むしろ貴重な材料となります。ヤマザクラの樹皮の内側から桜皮と呼ばれる生薬がとれて、煎じて咳(せき)の薬としたり、エキスを鎮咳薬(ちんがいやく)として使います。
器具、家具(和風)、楽器、挽き物(ひきもの)、彫刻などに使われます。マカンバ、ミズメなどのカンバ類の木材のことをサクラあるいはカバザクラ、ミズメザクラと呼んで、あたかもサクラ類の木材であるようにして取り扱っていますが、材面は異なります。このような商習慣はすでに明治時代からあったようです。

「サワグルミ」(クルミ科 Pterocarya rhoifolia)

「サワグルミ」(クルミ科 Pterocarya rhoifolia)

北海道南部、本州、四国、九州に分布しています。低湿地を好んで成育するので、ハイキングに行った時などに気をつけて周囲の樹木を見ると、谷川添いにこのサワグルミの木が生えているのに出合います。サワグルミという名前になじみの少ない人も多いと思いますが、実は私たちの身のまわりにもあります。それはマッチの軸です。サワグルミはポプラの類と並んで、主なマッチ用の材料として知られています。色が淡いので、染色して使う用途もあります。器具、経木、さらには下駄(山桐という名前で売られている)などがあります。

「シデ類」(カバノキ科 Carpinus spp. )

「シデ類」(カバノキ科 Carpinus spp. )

シデの類には、北海道、本州、四国、九州に分布するサワシバ、アカシデ、本州、四国、九州に分布するイヌシデ、クマシデなどがあります。あまり大きくはなりませんが、それでも樹高が15mほどになるものもあります。分布が広いので、雑木林の中に認められることが多い類です。関東地方でも、注意すると雑木林の中で見つけることができます。
用途には、かさの柄、靴型、ろくろ細工、漆器木地、家具、農具の柄、器具の柄などがあり、シイタケの栽培用の原木にも適します。薪炭材としても使われ、炭の質はカシ類に次ぐとされています。樹皮のついた小丸太を床柱にしたり、樹皮をはがして磨いた丸太は材面に大きなしわがあり、風流な趣があるので、やはり床柱に使われます。紡織用材(シャットル、木管など)としても知られています。

「シナノキ」(シナノキ科 Tilia japonica)

「シナノキ」(シナノキ科 Tilia japonica)

北海道、本州、四国、九州に分布し、中でも北海道が産地として知られています。よく似たオオバボダイジュは、北海道、本州北、中部に分布しています。前者をアカシナ、後者をアオシナとも呼びます。シナノキは中国大陸にも分布します。ドイツ歌曲にも出てくるリンデンバウム(ボダイジュ)は同類です。シナノキの樹皮の繊維は強く、織物に広く使われ、船網、箕(み)、酒や醤油のこし袋、蚊帳(かや)、袴(はかま)などにも用いられました。オオバボダイジュの樹皮の繊維も同様に使われますが、品質ははるかに劣るといわれています。
ラワンやメランチが合板用材として使われる以前には、北海道産のシナノキの合板が多量に市場に出ていました。現在は、キャビネット、彫刻、民芸品、洋菓子や紅茶などの箱材、鉛筆、割り箸、器具などに使われています。

「シラカシ」(ブナ科 Quercus myrsinaefolia )

「シラカシ」(ブナ科 Quercus myrsinaefolia )

福島県、新潟県以南の本州、四国、九州、済州島中国大陸中南部に分布しています。関東地方では一般的に見られるカシで、農家の周囲、並木、公園などによく植えられています。東京付近で見られるカシは、ほとんどシカラシといってよいでしょう。
器具材、車両材、機械材、建築材、枕木、薪炭材、器具柄材、櫓材など、重硬で強靱さが必要な用途に、広い範囲にわたって使われていましたが、現在ではかなり目に触れる機会が減ってきました。それでも、器具の柄、大工道具の柄、さらに体操の平行棒、木刀、白い色と緻密さを生かしたクラフトの食器用などに使われています。

「シラカンバ、白樺」(カバノキ科 Betula platyphylla var. japonica)

「シラカンバ、白樺」(カバノキ科 Betula platyphylla var. japonica)

福井、岐阜、静岡各県より北の海抜高の高い(600~1600m)地域に分布し、さらに北海道ではより低い(0~700m)各地に見られます。シラカンバは木材としてよりも、山で美しいシラカバ林を形づくっている樹木としてなじみが深いのではないでしょうか。山がいろいろな原因で裸地になったような場合に最初に生え始め、よく純林をつくることがあり、美しい景観をつくり出します。
一般に小さい木が多く、大きな丸太が必要な用途には使われません。色が淡く軽軟な木材が必要な用途には、さまざまな形で使われています。観光地の細工物、器具、家具、さらには削片板、パルプなどの原料になります。ナメコ栽培用の原木にも用いられます。

「タブノキ、イヌグス」(クスノキ科 Machilus thunbergii)

「タブノキ、イヌグス」(クスノキ科 Machilus thunbergii)

本州、伊豆七島、四国、九州、沖縄、台湾、南朝鮮、中国などに分布しています。海岸沿いでは、太平洋側では岩手県南部、日本海側では青森県南部にまで見られます。
器具、家具、建築などに用いられます。しかし、タブノキの木材は、暖かい地域に蓄積が多いので、それ以外の地域ではよく知られてはいません。樹皮は絹織物の染料になります。

「ツゲ、黄楊、アサマツゲ」(ツゲ科 Buxus microphylla var. japonica)

「ツゲ、黄楊、アサマツゲ」(ツゲ科 Buxus microphylla var. japonica)

本州、四国、九州の暖かい地域に分布しています。特に、御蔵島など伊豆七島は、古くから産地としてよく知られています。庭木や生け垣に植えられているので、知っている方ことも多いでしょう。
もともと木が大きくならないことと、木材が緻密で、仕上げた面に光沢があるため、工芸品の材料として使われることでよく知られています。いろいろな形をした櫛(くし)の伝統な材料であることはご存じでしょう。浮世絵の版木、特に顔や手など精密な細工の必要な部分に用いられています。将棋の駒、そろばん玉、彫刻、細工物、美術品、寄木、木象眼、定規、さまざまな器具などのほか、私たちの日常生活の中で大変重要な役割を持つ印鑑の材料としても使われています。

「トチノキ、栃」(トチノキ科 Aesculus turbinata)

「トチノキ、栃」(トチノキ科 Aesculus turbinata)

北海道南部、本州、四国、九州に分布し、東北地方や北海道南部に多く見られます。中国にも分布します。特に蓄積が多いとはいえませんが大木になるため、山地のハイキングコースなどでよく目にする木の一つです。また、街路樹や庭園樹としてよく見かけます。
軽軟で、加工がしやすいことから、器具、玩具、さらに最近では民俗家具に使われ、美しい木目の出るものは高く評価されています。観光地などで売られているみやげ物の茶道具、日用品などにかなり多く使われています。

「ドロノキ、ドロヤナギ」(ヤナギ科 Populus maximowiczii)

「ドロノキ、ドロヤナギ」(ヤナギ科 Populus maximowiczii)

北海道から本州の北部中部に分布し、渓流沿いに見られることが多い樹種です。また、シベリア、中国東北部、朝鮮、カムチャツカ、サハリンなどにも分布しています。その蓄積はあまり多くはなく、特に大木になることもありません。同じ属の種にヤマナラシ(ハコヤナギ)などがあります。この類は、一般にはポプラと呼ばれています。ポプラの類は海外ではパルプの原料とされることが多いため、品質が優れ、成長のよいものを生産することを目標として品種改良の研究が行われていますが、日本ではそれほどではありません。
日常、私たちが目によくするのはマッチの軸木でしょう。パルプ、箱、器具、包装、経木、木毛などにも使われます。炭は火薬の原料になります。

「ニセアカシア、ブラックローカスト」(マメ科 Robinia pseudoacacia)

「ニセアカシア、ブラックローカスト」(マメ科 Robinia pseudoacacia)

ニセアカシアという名前はなじみが深く、元から日本に生えていたように思いがちですが、実は北米原産です。米国ではブラックローカストと呼ばれています。もともとアパラチア山脈中央部およびオザーク山地などに分布していましたが、広く栽培されるようになり、北米東部、さらには西部にも生育するようになりました。日本には明治8年頃に導入され、その後、植栽されたり、また、野生化したりしています。アカシアの並木という場合は、アカシアと言っても、このニセアカシアのことです。
かつては、強さと耐朽性が高いことから、造船用材として英国へ輸出されていました。現在では、フェンスの支柱、枕木、燃料、さらには工芸品の材料として使われています。日本でも国産のニセアカシアが入手できる地域では、工芸品や家具への利用が試みられています。

「セン、ハリギリ、栓」(ウコギ科 Kalopanax pictus)

「セン、ハリギリ、栓」(ウコギ科 Kalopanax pictus)

北海道、本州、四国、九州、さらには朝鮮、中国、ロシアに分布しますが、産地としては北海道が最も有名です。この樹種は、木材としてはセン、樹木としては枝にとげがあることからハリギリと呼ばれます。木材をオニセンとヌカセンと呼び、2種類とすることがありますが、分類学上の違いによるものではなさそうです。オニセンと呼ばれるものは、年輪幅が広く、より重硬で、乾燥などで狂いやすいのですが、ヌカセンは年輪幅が狭く、より軽軟で、加工しやすく、どちらかと言えば家具用には後者が好まれているようです。
家具のほか、合板、器具、建築、下駄(価格が低く、ヤマギリと呼ばれる)などに使われています。かつて、センの合板が米国へ大量に“sen”の名で輸出されたことがあり、一時は米国市場での有名な輸出材の一つとされていました。

「ハルニレ、アカダモ、楡」(ニレ科 Ulmus japonica)

「ハルニレ、アカダモ、楡」(ニレ科 Ulmus japonica)

北海道、本州、四国、九州、さらにサハリン、朝鮮、中国などに分布しています。日本で一番蓄積が多いのは北海道です。そのため、北海道のイメージを表す時にニレとかエルムという形でこの木の名前が使われているのをご存じでしょう。同じ属の中には、このハルニレのほかにアキニレとオヒョウニレがあります。
用途としては、家具、器具、車両などがあります。内装や家具などで淡色の木材が好まれた時期があり、天然木化粧合板にかなりの量が使われました。その時にはムクの板も家具などに使われ、ちょっとしたブームになりました。

「ハンノキ、赤楊」(カバノキ科 Alnus japonica)

「ハンノキ、赤楊」(カバノキ科 Alnus japonica)

北海道、本州、四国、九州などに分布していますが、さらに朝鮮、中国東北部にも見られ、湿地に成育することを好みます。類似のヤマハンノキの類のほうが蓄積が多いので、木材として私たちの目に触れるのは、両者を含んだものです。いずれにしても、市場材として広く知られるほど蓄積が多くはないので、一般にはよく知られていません。いわゆる雑木として取り扱われ、目立たない用途に使われていました。ところが、最近北米から同属のオルダーが輸入されるようになり、家具や内装用材に使われています。
材面が特にに美しいとは言えず、表面に出る用途に使われることはあまりありません。器具、建築内装、家具の芯材、木製玩具などに用いられています。炭は火薬の原料になります。

「ブナ、掬」(ブナ科 Fagus crenata)

「ブナ、掬」(ブナ科 Fagus crenata)

北海道南部から本州、四国、九州に分布します。同属の樹種にイヌブナがあり、こちらは本州、四国、九州に分布しています。かつてブナ類は良質材とはされていませんでしたが、蓄積が多いことから利用技術の開発が精力的に進められた結果、蓄積は非常に少なくなりました。現在では、かつてブナに頼っていた家具工業は、その代替材をさがすことに努めています。
家具のほか、器具、合板、漆器木地 玩具、曲木、靴木型、日用品、パルプなどに用いられています。手づくりの木製の台所用品には、ブナが多く使われています。

「ホオノキ、朴」(モクレン科 Magnolia obovata)

「ホオノキ、朴」(モクレン科 Magnolia obovata)

北海道、本州、四国、九州、沖縄などに分布し、さらに朝鮮、中国中部にも見られます。蓄積は多くはありませんが、ご存じのように葉が大きいので、森林の中で比較的目につきやすい木です。また、旅館などで出される朴葉味噌の葉や学校の工作の時間に手にした木片などを思い出せば、ホオノキの名前が浮かんでくるのではないでしょうか。
軽軟で、狂いが少なく、細かい細工ができるため、彫刻、機械、箱、寄木、建築内装、器具, 刃物の鞘(さや)などに使われています。朴歯(下駄)はこのホオノキが使われており、木の名前がそのまま製品の名前になっています。

「マカンバ、ウダイカンバ、樺」(カバノキ科 Betula maximowicziana)

「マカンバ、ウダイカンバ、樺」(カバノキ科 Betula maximowicziana)

北海道から本州北中部、さらには南千島に分布します。カンバ類にはこのほか、ミズメあるいはヨグソミネバリ、ダケカンバなどがあり、前者は岩手県以南の本州、四国、九州、後者は北海道、本州北、中部、四国、朝鮮、ロシア沿海州、カムチャツカなどに分布します。カンバ類は北半球に広く分布し、それぞれの国で重要な広葉樹材の一つとされています。山岳地帯の風景の一つとして忘れられないシラカンバも、この仲間です。木材として重要なものはマカンバとミズメですが、ダケカンバもそれらの代替材として用いられています。注意を要するのは、このカンバ類を特に用材として用いる場合、業界ではサクラ(カバザクラあるいはミズメザクラ)と呼ぶことが多いことです。もちろんカンバ類ですからサクラ類とは関係がないのですが、このような習慣はすでに明治時代からあります。
家具、建築の内装用としては高級な材料です。また、器具、床板、合板、靴の木型などに用いられます。シラカンバはアイスクリームのスプーンや割り箸に用いられます。

「ミズキ」(ミズキ科 Cornus controversa)

「ミズキ」(ミズキ科 Cornus controversa)

北海道、本州、四国、九州に分布していますが、東京周辺でも低い山地で普通に見られます。特に谷沿いでは、枝を広げて谷をおおうようにして生え、よく目立つため、ハイキングの途中で見かけた方も多いのではないでしょうか。最近ではこけしがブームになり、その材料として優れているために需要が増加しています。このため、天然木だけでは十分ではなく、人工造林をして、こけしの製作に適した木材が採れるミズキをつくろうという試みが進められています。
古くから、ろくろ細工用材、印材、漆器木地、寄木細工、象眼、丸物(椀類)木地などに使われています。需要の伸びが顕著なこけし用材としては、有名な宮城県の鳴子こけしをはじめ、山形県産のこけしの一部にも使われています。箱根細工、家庭用品にも使われています。

「ミズナラ、楢」(ブナ科 Quercus crispula)

「ミズナラ、楢」(ブナ科 Quercus crispula)

北海道、本州、四国、九州、さらにサハリン、南千島、朝鮮などに分布しますが、代表的な日本での産地は北海道です。この類の木材は、広葉樹材としては日本だけでなく、欧米諸国においても代表的なものです。フランスのルーブル博物館に展示されている家具の中には、ヨーロッパ産の同類の木材が使われているものがあります。最近、日本でもミズナラ製の家具に対する需要が高まってきています。これは、住宅様式の欧風化と本物指向に伴って、ミズナラが持つ木材の味わいが見直されるようになったからでしょう。歴史的にヨーロッパではミズナラの類が高級棺用材として珍重され、北海道から、そのための厚板として古くから輸出されています。木材の少ない日本から海外へ輸出されたものとして、珍しい例です。
洋風家具、器具、床板、運動具、洋酒樽、造船、木炭、合板、単板、車両などに使われています。ウイスキーの樽は、日本はもちろん、イギリスやアメリカでもこの類の木材でつくられており、日本酒とスギとの関係のように欠かせないものです。

「ミズメ、ヨグソミネバリ」(カバノキ科 Betula grossa)

「ミズメ、ヨグソミネバリ」(カバノキ科 Betula grossa)

本州の岩手県以南、四国、九州に分布しています。この種はカンバの中では南方系で、関西より西でも目にすることがあります。特徴は、樹皮にサロメチールによく似た芳香があることです。このことに気づくと、樹皮がサクラのそれによく似ていることと合わせて、簡単にほかと区別することができます。カンバの類の用材は取り引き上、よくサクラ(カバザクラ、ミズメザクラ)と呼ばれることがあります。もちろん、サクラの類とは関係がありません。
マカンバと同じ用途に用いられますが、木がより小さいため、生産される丸太の直径も小さくなります。最も一般的な用途は家具です。特に洋家具、あるいは洋風の内装用の材料として貴重なものとなっています。

「ヤチダモ、タモ」(モクセイ科 Fraxinus mandshurica)

「ヤチダモ、タモ」(モクセイ科 Fraxinus mandshurica)

北海道、本州北、中部、さらに朝鮮、中国、樺太、シベリアにも分布します。北海道は中でも産地としてよく知られ、代表的な木材の一つです。この類の木材は有用なものが多く、本州、四国、九州に分布するシオジ、北海道、本州、四国、九州、屋久島に分布するアオダモ、その他があります。また、野球のバット用材として有名な北米産のホワイトアッシュは同類で、この類の木材は世界的に運動具用材として有名です。
他の用途としては、家具、器具、合板、内部装飾などがあります。かつて木製のテニスラケットが全盛の時期には、この類の木材がほとんどすべてに使われていました。

「ヤナギ類」(ヤナギ科 Salix spp.)

「ヤナギ類」(ヤナギ科 Salix spp.)

日本に分布するヤナギの類は、あまり大きくはならず、大きいものでも樹高20mほどです。シダレヤナギ、バッコヤナギなどは大きくなる種類です。一般には、河川の流域、低湿地などによく見られる木です。現在、日常的に使われているプラスチック製のスーツケースが普及していなかった時代には、コリヤナギの茎を編んでつくった柳行季(やなぎごおり)は旅行用としても、収納用としても大変重要な道具の一つでした。したがって、その用途のために栽培していたところもありました。
軟らかく肌目が精なため、まな板や裁縫の裁ち板などに使われました。珍しい用途としては、ヤナギ類から作った炭は絵画用に適しています。また、エノキダケやヒラタケの栽培用の原木、火薬の原料としても使われます。コリヤナギ以外のヤナギ類でも、その枝を編んでかごなどにすることがあります。

「ヤマグワ」(クワ科 Morus bombycis)

「ヤマグワ」(クワ科 Morus bombycis)

北海道から本州、四国、九州、沖縄にかけて分布しています。伊豆諸島にもあります(ハチジョウグワ)。養蚕のために使われているものの中には、ヤマグワの系統のものが多いといわれています。このほかに養蚕用として中国原産のトウグワが、明治初期、日本に導入されています。ヤマグワの蓄積は非常に少ないこともあり、用途が限られています。
さまざまな美しい木目を持つので、その特徴的な色と組み合わせて化粧的な用途に使われています。主として鏡台などの和家具、指物、彫刻、楽器、旋作物などに用いられます。